- 2026年7月18日
CT検査で指摘された、非結核性抗酸菌症(NTM)ってなに?
検診レントゲン異常の精査の胸部CT検査で「非結核性抗酸菌症の疑いがあります」「NTMの可能性があります」と言われると、多くの方は「結核なの?」「人にうつるの?」「すぐ治療が必要?」と不安になると思います。
非結核性抗酸菌症は、名前に「抗酸菌」と入っているため結核と混同されやすい病気ですが、結核とは別の病気です。まず大切なのは、非結核性抗酸菌症は通常、人から人へうつる病気ではない、ということです。家族や職場の人に感染させる心配は基本的にありません。
非結核性抗酸菌症とは?

非結核性抗酸菌、英語ではNTM(nontuberculous mycobacteria)と呼ばれる菌は、土、水道水、浴室、シャワー、ほこりなど、私たちの身近な環境に広く存在しています。多くの人は日常生活の中でNTMに触れていますが、全員が病気になるわけではありません。
NTMが肺にすみつき、画像異常や咳・痰などの症状を起こす状態を「肺非結核性抗酸菌症」と呼びます。原因菌として最も多いのはMAC菌と呼ばれるグループで、「肺MAC症」と言われることもあります。
CTではどんな所見で疑われる?

肺NTM症は、レントゲンよりもCTで見つかることが多い病気です。CTでは、小さな粒状の影、気管支が拡がる気管支拡張、空洞を伴う影などが見られることがあります。
特に中高年の女性や、やせ型の方、過去に肺の病気がある方、気管支拡張症がある方では多く見つかることがあります。一方で、CTでNTMが疑われても、すぐに「確定診断」になるわけではありません。似たようなCT所見を示す病気は他にもあるため、画像だけで判断せず、痰の検査などと合わせて確認します。
症状がないこともあります
肺NTM症では、長引く咳、痰、血痰、微熱、体重減少、だるさ、息切れなどが出ることがあります。ただし、初期には症状がほとんどない方も少なくありません。健診や別目的のCTで偶然見つかることもあります。
この病気の特徴は、比較的ゆっくり進行することが多い点です。数週間で急激に悪くなる肺炎とは違い、数か月から年単位で変化を見ていくこともあります。そのため、「見つかった=すぐ強い薬で治療」とは限りません。
診断には、採血検査や痰の検査が重要です

NTMは環境中にいる菌なので、痰から1回だけ検出されても、それだけで病気と断定できないことがあります。肺NTM症の診断では、CTなどの画像所見、他の病気の除外、そして抗酸菌培養検査が重要です。
一般的には、異なる日の痰の培養検査で2回以上NTMが検出されることが診断の根拠になりますが、培養には1ヶ月かかる場合もあり、時間がかかる検査になります。痰が出にくい方では、必要に応じて気管支鏡検査を検討することもあります。
痰が出にくい方や他の疾患を含めた鑑別を行う場合では、「抗MAC抗体」という血液検査を行うことがあります。これは、非結核性抗酸菌症の中でも頻度の高い肺MAC症を疑う際に、診断の参考となる検査です。ただし、抗MAC抗体が陽性であるだけで診断が確定するわけではなく、陰性でも完全に否定はできませんので解釈には注意が必要です。CT所見や症状、過去画像との比較、可能であれば痰の検査などをあわせて総合的に判断します。
また、結核と区別することも非常に重要です。NTMは通常うつりませんが、結核は公衆衛生上の対応が必要になるため、抗酸菌検査ではNTMか結核菌かを確認します。
治療は必ず必要?
肺NTM症と診断されても、全員がすぐに治療を始めるわけではありません。症状が軽い、痰の菌量が少ない、空洞がない、CTの変化が乏しい場合には、定期的にCTや痰の検査を行いながら経過を見ることがあります。
一方で、咳や痰がつらい、血痰がある、体重減少がある、CTで悪化している、空洞がある、痰の塗抹検査で菌が多い、などの場合には治療を検討します。特に空洞を伴うタイプは進行しやすいことがあり、慎重な判断が必要です。
治療の中心は抗菌薬です。肺MAC症では、通常、複数の抗菌薬を組み合わせて長期間内服します。治療期間は長く、痰の培養が陰性化してからも一定期間は続けることが推奨されています。薬の副作用として、胃腸症状、肝機能障害、視力障害、薬疹などが出ることがあるため、定期的な採血や眼科チェックが必要になることがあります。
日常生活で気をつけること
NTMは身近な環境にいる菌ですが、過度に神経質になる必要はありません。ただし、浴室やシャワーヘッド、加湿器などはぬめりやカビをためないよう清潔に保つことが大切です。加湿器を使う場合は、水を入れっぱなしにせず、こまめに洗浄・乾燥しましょう。
また、喫煙は肺の防御力を下げるため避けるべきです。咳や痰が続く場合、血痰が出る場合、体重が減る場合、息切れが強くなる場合は、早めに呼吸器内科へ相談してください。
まとめ
CTで「非結核性抗酸菌症の疑い」と言われても、すぐに怖がりすぎる必要はありません。NTMは結核とは異なり、通常は人にうつる病気ではありません。ただし、ゆっくり進行することがあり、放置してよいか、治療が必要かは人によって異なります。
大切なのは、CT所見だけで判断せず、痰の抗酸菌検査、症状の有無を総合して評価することです。検診レントゲン異常や、CT所見を指摘された場合は、呼吸器内科で一度相談してみましょう。
引用文献
- 日本結核・非結核性抗酸菌症学会・日本呼吸器学会. 肺非結核性抗酸菌症診断に関する指針 2024年改訂.
- Daley CL, et al. Treatment of Nontuberculous Mycobacterial Pulmonary Disease: Official ATS/ERS/ESCMID/IDSA Clinical Practice Guideline. 2020.
- British Thoracic Society. Guidelines for the management of non-tuberculous mycobacterial pulmonary disease. Thorax. 2017.
- 成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解 ― 2023年改訂 ―.
執筆者情報
佐藤 賢弥(さとう けんや)
医療法人社団南州会 東京品川フロントクリニック 呼吸器内科医師
【保有資格】
日本内科学会 認定内科医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
井上 哲兵(いのうえ てっぺい)
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長 / 医学博士
2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。
同年8月に三浦メディカルクリニックを開院し、以降も以下のクリニックを展開。
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ(1980年創業)
横浜フロントクリニック(2024年5月開院)
東京品川フロントクリニック(2026年1月開院)
自由が丘フロントクリニック(2026年10月開院予定)
新宿区分院(2027年12月開院予定)
三浦メディカルクリニック
【保有資格・所属学会】
医学博士
日本内科学会 認定内科医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医