• 2026年9月27日

健康診断で肝機能を指摘されたら(AST・ALT・γ-GTPの見方)

秋の健康診断シーズンです。結果表が戻ってきて、肝機能の欄に「要再検査」「要経過観察」と書かれていた。けれど体調はいつもどおりで、痛くもかゆくもない。忙しさに紛れて、そのまま1年が過ぎてしまった。

外来でよく伺うお話です。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるとおり、機能が低下してもかなりの段階まで自覚症状が出ません。だからこそ、健康診断の数値が数少ない手がかりになります。

この記事では、健診の肝機能の数値が何を見ているのか、そして「様子を見てよい場合」と「一度調べておいた方がよい場合」の境目を整理します。

健康診断の肝機能の欄には、通常いくつかの項目が並んでいます。それぞれ見ているものが違います。

ALT(GPT)

主に肝臓の細胞に含まれる酵素です。肝細胞が傷つくと血液中に漏れ出すため、肝臓そのものの状態を比較的よく反映します。健診で最初に注目される項目です。ALTが主に高い場合は脂肪肝を主に考えることが多いです。

AST(GOT)

ALTと似た働きの酵素ですが、肝臓以外に心臓や筋肉にも含まれます。そのため、激しい運動のあとに上がることもあります。ASTが主に高い場合は、アルコール多飲による肝機能障害を考えることが多いです。

γ-GTP

胆道系の酵素で、アルコールや一部の薬剤に反応して上がりやすい性質があります。飲酒量との関連が知られていますが、飲酒習慣がなくても脂肪肝や胆道の問題で上昇することがあります。

健診で肝機能を指摘された方の背景として最も多いのは脂肪肝ですが、この領域は近年、考え方が整理されました。2023年に国際的な合意として病名の枠組みが見直され、日本でも2024年に日本消化器病学会・日本肝臓学会から日本語病名が示されています。従来のNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)はMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)、NASHはMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)と呼ばれるようになりました。

従来は「アルコールが原因ではない」という除外によって定義されていたのに対し、現在は肥満・血糖・血圧・脂質といった代謝の異常が背景にあることを積極的に位置づける形になりました。脂肪肝は肝臓だけの問題ではなく、全身の代謝の状態が肝臓に現れたものとして扱われます。

痩せている方にも起こります

BMIが標準の範囲でも、内臓脂肪や血糖の状態によっては脂肪肝が生じます。「太っていないから関係ない」という判断はあてはまりません。

お酒を飲まない方にも起こります

飲酒習慣のない方の脂肪肝は珍しくありません。一方、飲酒と代謝の両方が関わる場合はMetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)という区分で整理されるようになりました。

一部は炎症や線維化へ進みます

脂肪が溜まっているだけの状態にとどまる方が多い一方で、炎症を伴い、長い時間をかけて肝臓が硬くなっていく方もいます。この経過は自覚症状に乏しく、進行の有無は血液検査や画像検査で追っていくことになります。

アルコール、B型・C型肝炎ウイルス、自己免疫性の肝疾患、薬剤やサプリメントの影響、甲状腺機能の異常でも肝機能の数値は動きます。これらは血液検査で確認できるものが多く、最初に一度調べておく意味があります。また、肝臓癌などの悪性疾患が原因である可能性もあり。超音波検査と組み合わせて診断をすることが何よりも大切です。

当院では、健診で肝機能を指摘された方に対して、まず原因の切り分けから行います。

  • 問診で経過を整理:いつから指摘されているか、数値の推移、飲酒量、体重の変化、服用中の薬やサプリメント、ご家族の病歴を確認します。過去の健診結果をお持ちいただくと、推移が最も有力な手がかりになります
  • 血液検査:肝機能の再検査に加え、肝炎ウイルス、血糖値とHbA1c、脂質、甲状腺機能などを状況に応じて組み合わせます
  • 画像検査:腹部超音波検査で肝臓への脂肪の蓄積を確認します。必要に応じてCTと組み合わせた評価も院内で行えます

検査から結果の説明までを同じ日のうちに進められる体制を取っており、検査のために別の日にお越しいただく必要を減らしています。当グループは複数の院に専門医が在籍する体制を取っており、判断の難しい所見についてはグループ内で検討したうえでお伝えしています。

こんな場合は受診をお勧めします
・健診で肝機能の再検査・経過観察を指摘されたまま受診していない
・ALTやγ-GTPの数値が年々上がってきている
・肝機能とあわせて血糖・脂質・血圧・尿酸のいずれかも指摘されている
・体重が増えてきている、または短期間で大きく変動した
・常用している薬やサプリメントがある
・過去に肝炎ウイルスの検査を受けたことがない

一方、基準値をわずかに超える程度で、飲酒の翌日や激しい運動の直後に受けた健診であった場合は、条件を整えて再検査すると戻っていることもあります。その場合でも、一度は再検査を受けて確認しておく段階だとお考えください。

症状がないのに受診する必要はありますか?

肝臓は自覚症状が出にくい臓器のため、症状の有無は受診を判断する材料になりにくいのが実際です。むしろ、自覚症状が出ていない段階で確認できることが健康診断という仕組みの利点です。一度原因を確認しておけば、その後は必要な間隔で経過を見ていく形に整理できます。また、万が一にも肝臓癌や転移性肝癌だった場合、手遅れになる可能性があります。

お酒を飲まないのに脂肪肝と言われました。なぜですか?

脂肪肝は飲酒だけが原因ではありません。現在はMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)として、肥満・血糖・血圧・脂質といった代謝の状態と結びつけて捉えられています。BMIが標準の範囲でも起こるため、体型や飲酒習慣だけで判断することはできません。

脂肪肝は放っておくとどうなりますか?

脂肪が溜まっているだけの状態にとどまる方が多い一方で、炎症を伴い、長い時間をかけて肝臓が硬くなっていく方もいます。どちらの経過をたどるかは自覚症状では分からないため、血液検査や画像検査で状態を確認し、必要な間隔で追っていくことになります。

品川で健診の再検査を受けられますか?

東京品川フロントクリニックでは、健診で指摘された項目の再検査に対応しています。血液検査・腹部超音波検査・CTを当日実施でき、結果の説明まで同じ日のうちに進められる場合があります。健診結果をお持ちください。品川駅港南口から徒歩30秒です。

大谷 真理子(おおたに まりこ)

医療法人社団南州会 東京品川フロントクリニック院長 / 医学博士
【保有資格】
医学博士
日本内科学会認定内科医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医


井上 哲兵(いのうえ てっぺい)医師

医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長 / 医学博士
2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。
同年8月に三浦メディカルクリニックを開院し、以降も以下のクリニックを展開。
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ(1980年創業)
横浜フロントクリニック(2024年5月開院)
東京品川フロントクリニック(2026年1月開院)
自由が丘フロントクリニック(2026年10月開院予定)
新宿区分院(2027年12月開院予定)
三浦メディカルクリニック

【保有資格・所属学会】
緩和ケア研修会修了医
医学博士
日本内科学会認定内科医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
日本医師会認定産業医
厚生労働省認定 臨床研修指導医

参考資料

  • 日本消化器病学会・日本肝臓学会『MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)』
  • 日本消化器病学会「脂肪性肝疾患の日本語病名に関して」(2024年8月)
  • 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」
東京品川フロントクリニック 03-6456-5040 ホームページ