- 2026年2月25日
花粉症に対する注射剤は2種類あります。優等生のゾレアと悪魔の薬ケナコルトの違いをご存知ですか?花粉症で注射治療を検討している方は必読です。

ゾレアとはどんな治療?
花粉症状が落ち着く仕組み
花粉症は「IgE抗体」という物質が花粉に反応して起こります。ゾレアは
👉 IgEを直接ブロック
👉 アレルギー反応そのものを起こりにくくする
つまり、症状を抑える薬ではなく原因経路を抑える薬です。
焚き火を水を使って消火するのではなく、新たな薪の供給を止めて消火を図るイメージ。
特徴
- 保険適用あり(重症例などの諸条件あり)
- 2〜4週ごとの注射
- 医療機関で投与必須
- 効果が出るまで数日
ケナコルト注射とは
ケナコルト(トリアムシノロン)は長時間作用型ステロイド注射です。
花粉症では炎症を強力に抑えて症状を止める目的で使われます。
仕組み
👉 花粉症以外の免疫反応を丸ごと抑制(全ての免疫反応を止める薬)
👉 炎症を一気に止める。
つまり
原因を狙う治療ではなく、反応全体を抑え込む治療です。焚き火を消防車の放水で一気に消火するようなイメージ。
最大の違い(重要ポイント)
| 項目 | ゾレア | ケナコルト |
|---|---|---|
| 作用 | IgEをピンポイント阻害 | ステロイドの注射であり、免疫全体を抑制 |
| 位置づけ | 重症花粉症の標準治療選択肢 | 内科学会・アレルギー学会・耳鼻科学会は非推奨 |
| 持続 | 2週から4週毎の継続投与必要 | 1回で数か月 |
| 安全性 | 高い 喘息では小児から使用できるくらい安全性が高い。 | 低い。 副作用リスクが極めて高い |
ケナコルト注射のリスク(最重要)
ステロイド注射は**「効くけど危険性もある治療」**です。
とくに花粉症のような良性のアレルギー疾患で投与されることに各学会は明確に反対を表明しています。
主な副作用
短期
- 血糖値上昇 糖尿病重症化
- 不眠・気分変調
- 感染症悪化
中期
- 満月様顔貌(ムーンフェイス)
- 体重増加
- 血圧上昇
長期・重篤
- 骨粗しょう症
- 糖尿病発症
- 副腎機能抑制
- 白内障・緑内障
- 免疫低下による感染症
👉 特に問題なのは
1回打っただけでも長期間薬の作用が良くも悪くも続いてしまいます。仮に重篤な副作用が出ても止められないのです。
医療界の基本的な考え方
現在、多くの専門医は
「花粉症に安易なケナコルト(ステロイド)注射は推奨しない」
という立場です。
理由
- 症状はつらくても命に関わらない病気
- それに対して副作用リスクが大きい
- 将来を棒に振る可能性がある。目先のメリットよりも将来のデメリットの方がはるかに大きいことが分かっているから。
どちらを選ぶべき?
重症で通常治療が効かない場合
→ ゾレアが検討対象。
将来の生活を全て無視して今の症状をどうにかしたいなどの即効性だけ求める場合
→ ケナコルトを勧める医療機関もあるが、かなりレア。なぜケナコルトをそんなに勧めるのか聞いて見てもいいかも。
👉投与するには絶対的なリスク理解が必須。
まとめ(超重要ポイント)
✔ ゾレア=原因物質を狙う現代型治療
✔ ケナコルト=免疫を抑え込む古典的治療
✔ 花粉症目的のステロイド注射はリスクをしっかりと理解した上で慎重判断が必要。安易な投薬は避けなければならない。
✅ 内科医からの現実的アドバイス
「安く効く治療だけど副作用は強い」というのがケナコルトの実態です。
花粉症治療は“効き目の速さと効果・治療の値段”ではなく安全性で選ぶことが最重要ポイントです。
ちなみに吸入ステロイドや点鼻のステロイドは投与量が極めて微量でかつ局所投与(投与した場所にしか薬理作用が出ない投与方法)のため、医師の指示を守って使用すれば安全性が高い薬になります。ステロイド治療を考える時はその点の理解はしておく必要があります。
全てのステロイド製剤=リスクが高い薬 ではないのでご注意ください。
執筆者情報
大谷 真理子(おおたに まりこ)
医療法人社団南州会 東京品川フロントクリニック院長 / 医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
【保有資格】
医学博士
日本内科学会認定内科医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
井上 哲兵(いのうえ てっぺい)医師
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長 / 医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。同年8月に三浦メディカルクリニックを開院し、以降も以下のクリニックを展開。
横浜フロントクリニック(2024年5月開院)
東京品川フロントクリニック(2026年1月5日開院)
目黒区分院(2026年9月開院予定)
新宿区分院(2027年12月開院予定)
【保有資格・所属学会】
緩和ケア研修会修了医
医学博士
日本内科学会認定内科医
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
日本医師会認定産業医
厚生労働省認定 臨床研修指導医
身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
難病指定医(呼吸器)