- 2026年2月15日
夜に咳が止まらないとき、まず考えるべきこと――放置できる咳と、すぐに受診したほうがいい咳の見分け方

夜になると突然咳が止まらなくなる。横になった途端に咳き込んで目が覚める。こうした経験をお持ちの方は少なくありません。日中は気にならないのに、夜だけ症状が強くなると、「病気が悪化しているのでは」と不安になることもあるでしょう。
この記事では、夜に咳が止まらない原因と、受診すべきタイミングの判断基準について、呼吸器内科専門医の視点から解説します。
まず30秒だけ、自分の状況を整理してください
夜の咳について調べている多くの方は、「原因を知りたい」というより、「この咳は、今すぐ医療機関に行くほどのものなのか? それとも、もう少し様子を見ていいのか?」を判断したい方もいるはずです。
以下のうち、当てはまるものはありますか。
- 夜中や明け方に、咳で目が覚める
- 横になると咳が出やすい
- 2から3週間以上、改善することなくずっと続いている
- 咽頭痛や鼻水症状は治ったのに、咳だけ残っている
- 会議中や電話中に咳を我慢している
もし1つでも当てはまるなら、この記事をぜひ最後までお読みください。
夜の咳は「悪化」ではなく症状の日内変動!
夜になると咳が強くなると、「病気が進んでいるのでは」と不安になる方も少なくありません。しかし一般的には、夜間には以下のような生理的変化が重なります。
- 副交感神経が優位になり、気道が狭くなりやすい
- 横になることで、横隔膜が挙上し肺の容積が小さくなり、気管支が物理的に狭くなる。
- 横になると胃酸が逆流しやすい
- 空気が乾燥し、咳反射が起きやすい
日中は落ち着いていたの夜、ベッドに入ったら、咳が出て苦しくなるのです。そして翌日昼頃にはまた落ち着いてきて、治ってきたと勘違いし様子を見るのです。そして夜にまた悪化する。これを繰り返す患者さんが多いのです。これは単純に日内変動を見ているだけなのです。
夜に咳が出やすい代表的な疾患といえば気管支喘息!

気管支喘息――「ヒューヒュー・ゼーゼー」がなくても喘息の可能性がある
一般的に、喘息は夜から明け方に症状が出やすいとされています。これは、夜間に副交感神経が優位になり、気道が収縮しやすくなるためと考えられています。
「咳だけの喘息」は、本人が病気と認識しづらいのが特徴です。喘鳴がないため、「ただの風邪の残り」「気管支が弱いだけ」と思い込み、数週間から数か月にわたって放置してしまうケースも少なくありません。
ある患者さんは、「風邪を引いてから2か月、毎晩咳で目が覚めていたが、喘息とは思わなかった」と話していました。呼吸機能検査と呼気NO検査の結果、気管支喘息の診断に至りました。
受診をすべき「判断の基準」――3つの軸で考える
夜の咳で重要なのは、病名を当てることではありません。医療現場で重視されるのは、主に次の3点です。
① どれくらい続いているか――時間軸で見る
- 1〜2週間で改善傾向 → 経過観察
- 2から3週間以上変化がない → 専門的な切り分けが必要
一般的に、風邪に伴う咳は1〜2週間程度で自然に軽快すると言われています。しかし、2から3週間を超えて続く咳は医学的に「遷延性咳嗽・慢性咳嗽」と呼ばれ、風邪とは異なる病態として扱われます。
この「2から3週間」という基準は、日本呼吸器学会の咳嗽診療ガイドラインでも重視されており、専門的な評価を検討する一つの目安とされています。
② 生活にどれくらい影響しているか――生活の質で見る
- 睡眠が妨げられている
- 仕事中に咳を我慢している
- 会議や電話で支障をきたしている
- 周囲に気を使って疲れる
この時点で、生活の質(QOL)は確実に下がっています。
「2から3週間経っていないから様子を見よう」と考えていても、すでに日常生活や仕事に支障をきたしている場合は、期間を問わず受診を検討する合理的なタイミングと言えます。
ある患者さんは、「会議中に咳が出るのが怖くて、発言を控えるようになった。自分の評価にも影響しているのではと不安だった」と話していました。こうした心理的な負担も、受診を考える十分な理由になります。
③ 繰り返していないか――パターンで見る
- 毎年同じ時期に出る
- 風邪のたびに長引く
- 定期的に発作のように咳が出る
この場合、背景疾患がある可能性が高くなります。
繰り返すパターンは、単なる偶然ではなく、体質的な要因や慢性的な病態が関与していることを示唆します。こうした「反復性」は、診断において重要な手がかりになります。
「毎年冬になると咳が続く」という方は、季節性のアレルギーや寒冷刺激による気道過敏性を背景に持っている可能性があります。
すぐに受診すべき「危険なサイン」
以下のような症状が一つでもある場合は、できるだけ早く呼吸器内科を受診してください。
- 血痰が出る
- 息苦しさを伴う
- 発熱が続く、または再燃した
- 体重が減少している
- 胸の痛みを伴う
- 声がかすれる(2週間以上)
これらは、肺炎、結核、肺がん、肺塞栓症といった重篤な疾患の初期症状として現れることがあります。特に血痰や原因不明の体重減少は、早急な精密検査が必要なサインです。
なぜ「とりあえず咳止め」は危険です
咳は、原因が1つとは限りません。
- 気道の炎症(咳喘息、気管支炎)
- 胃酸の逆流(逆流性食道炎)
- 鼻からの刺激(後鼻漏)
- 呼吸の質の低下(睡眠時無呼吸症候群)
これらが重なっているケースも少なくありません。
そのため、
- すぐ薬を出す
- 症状だけで決める
という対応では、根本的な原因の切り分けができないことがあります。
咳止め薬は、あくまで「咳反射を抑える」対症療法です。原因疾患が特定されないまま咳だけを止めても、背景にある病態は進行し続ける可能性があります。
たとえば、喘息に対して一般的な咳止め薬(中枢性鎮咳薬)を使っても効果は乏しく、吸入ステロイド薬による気道炎症のコントロールが必要です。同様に、逆流性食道炎による咳には、胃酸を抑える治療が不可欠です。
ある患者さんは、「市販の咳止め薬を1か月以上飲み続けたが、まったく効かなかった。検査の結果、喘息と分かり、吸入薬に切り替えたら数日で楽になった」と話していました。
つまり、「なぜ咳が出ているのか」を明らかにすることが、適切な治療の第一歩となります。
東京品川フロントクリニックでは
当院では、呼吸器内科専門医が診察を担当し、以下のような検査を組み合わせて、「何が原因で、何を否定できるか」を整理します。

胸部CT検査(即日対応可能)
肺炎、結核、肺がん、間質性肺炎などの器質的疾患の有無を確認します。CTは肺の微細な変化まで捉えることができ、胸部X線では見逃されやすい病変の早期発見にもつながります。
当院では院内にCT装置を備えているため、初診当日に撮影し、その場で結果を確認することが可能です。
呼吸機能検査(スパイロメトリー)
気道の閉塞や狭窄の程度を数値で評価します。気管支喘息・COPDの診断に不可欠な検査です。息を吸ったり吐いたりする力を測定し、気道の状態を客観的に把握します。
検査時間は10分程度で、痛みはありません。
呼気NO(一酸化窒素)測定
気道の炎症の程度を反映する検査で、喘息の診断に有用です。息を吐くだけで測定できる非侵襲的な検査です。
数値が高ければ気道に好酸球性炎症がある可能性が示唆され、吸入ステロイド薬の効果が期待できます。
血液検査・アレルギー検査
炎症反応(白血球数及び血液像)やアレルギー体質の評価(好酸球数、IgE値、特異的IgE抗体)を行います。感染症の有無や、アレルギー性疾患の関与を判断します。
睡眠時無呼吸検査(簡易検査・精密検査)
いびきや日中の眠気がある場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性を評価します。自宅で行える簡易検査から、より詳しい精密検査まで対応しています。
当日検査・当日評価を重視する理由
一般的には初診 → 別日に検査予約 → 後日結果説明となることも多い分野ですが、当院では可能な範囲で検査・評価・治療方針の提示までを初診日に完結させる体制を整えています。
たとえば、午前中に受診して、別日のCT検査を予約・実施し、結果を踏まえた治療方針をさらに別日には聞くというケースも少なくありません。
この体制により、「何度も通院する時間が取れない」という忙しい社会人の方にとって、当院が現実的な受診の選択肢となることを目指しています。
もちろん、すべてのケースで当日完結が可能というわけではありませんが、大学病院レベルの検査機器を院内に備えることで、通院回数や時間的負担の軽減につながっています。
忙しい社会人にとっての現実的な選択――「安心」も治療の一部
すべての夜の咳が、治療を必要とするわけではありません。
検査の結果、
- 今は様子見で問題ない
- 生活調整で十分
という結論になることもあります。
ただ、判断材料がないまま迷い続けること自体が負担になるケースも少なくありません。
「もう少し様子を見よう」と考えているうちに、
- 睡眠不足が続き、日中のパフォーマンスが落ちる
- 仕事中に咳を我慢することでストレスが増える
- 症状が慢性化し、治療に時間がかかるようになる
- 「もしかして重い病気では」という不安が膨らむ
といった状況に陥ることもあります。
ある患者さんは、「検査の結果、『今は大きな問題はない』と言われただけで、すごく気持ちが楽になった。咳はまだ少し残っていたが、不安が消えたことで、気にならなくなった」と話していました。
「安心」も、立派な治療の一部です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 市販の咳止め薬を飲んでも効かない場合は?
市販薬で効果がない場合、喘息や逆流性食道炎など、特定の治療が必要な疾患が隠れている可能性があります。2週間以上市販薬を使用しても改善しない場合は、専門医の診察をお勧めします。
Q2. 咳だけで呼吸器内科を受診してもいい?
はい、もちろんです。「咳だけ」という症状こそ、呼吸器内科の専門領域です。遠慮せずに受診してください。
Q3. 検査は痛い? 時間はどのくらい?
当院で行う検査のほとんどは非侵襲的(痛みがない)です。呼吸機能検査や呼気NO測定は息を吐くだけ、CT検査も横になっているだけです。
Q4. 初診当日に治療を開始できる?
多くの場合、初診当日に治療方針を決定し、治療を開始できます。ただし、精密検査が必要な場合や、他科との連携が必要な場合は、段階的な対応になることもあります。
Q5. 費用はどのくらいかかる?
保険診療の範囲内で行います。初診料・検査料・処方料を含めて、3割負担の方で概ね5,000〜15,000円程度です(検査内容により変動します)。
迷っているなら、一度専門医に相談してみる。それも合理的な選択肢の一つです。
執筆者情報
大谷 真理子(おおたに まりこ)
医療法人社団南州会 東京品川フロントクリニック院長 / 医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
【保有資格】
- 医学博士
- 日本内科学会認定内科医
- 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
- 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
井上 哲兵(いのうえ てっぺい)医師
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長 / 医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。同年8月に三浦メディカルクリニックを開院し、以降も以下のクリニックを展開。
- 横浜フロントクリニック(2024年5月開院)
- 東京品川フロントクリニック(2026年1月5日開院)
- 目黒区分院(2026年9月開院予定)
- 新宿区分院(2027年12月開院予定)
【保有資格・所属学会】
- 緩和ケア研修会修了医
- 医学博士
- 日本内科学会認定内科医
- 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
- 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定 臨床研修指導医
- 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
- 難病指定医(呼吸器)
